清掃剤について

充電部に対する丁寧な清掃は電気管理の基本ですので、はじめはいろんな清掃剤や磨き剤を使いたくなるものです。ただ、実際には何でもかんでも清掃剤を使う必要はありません。電力会社の特高設備であっても清掃剤を使うのは、じんあいやばい煙などで汚損の激しく水拭きできれいにならない場合に限られるようです。

私は基本的に水拭きですが、アルコール溶液を使う事も少なくありません。濃度に関しては季節に(気温に)より30~70%で使い分けています。

アルコール自体に洗浄効果はありませんが、揮発性を高めて絶縁抵抗時の予断をなくす事が理由です。参考までに下記の三菱電機製VCBの取扱説明書を見てください。

三菱は30%程度の濃度を推奨していますが、VCBの絶縁物の場合には80%でも問題ないとの回答を得ています。ただ手荒れには十分に注意してください。

汚れが酷くなければ、ガイシ磨き剤は不要のように思えますが、清掃剤よっては一時的に絶縁を回復させる効果が期待できる物もありますので、年次点検時に停電時間が限られ線路から機器を切り離す時間がないようなケースで、機器単体の絶縁抵抗値を推し測りたい時には有効です。例えばLBSの絶縁劣化により変圧器の絶縁性能評価に影響を与えたくない時などですが、ポリプロピレンや樹脂ガイシに対してはその使用はメーカーに確認するなどして慎重に行なってください。特にVCBなどの絶縁剤はガイシ磨き剤の使用を認めていないメーカーがほとんどです。問い合わせますと「未検証のため」という回答が得られますが、絶縁物にどのような影響があるかははっきりとした答えはもらえません。以下に私が知りうる情報を列挙しますので参考にして下さい。

 

【ガイシ清掃剤SC-1000(大都工業)】

電気管理技術者の間では最もポピュラーな清掃剤。研磨剤不混入。絶縁回復機能とワックス効果によりホコリが付着しにくいと証言する技術者多数。少数派ながらppホルダーに対する侵食を疑う技術者もあり(統計的データはなく本人の長年の使用感から)。水溶性・揮発性ガスなし。

 

【ダイピュア・ダイプラス】

絶縁回復機能と拭き取りなしでの高い洗浄力性能が謳い文句。営業に来たので「実際に使用している電気管理技術者の実名での使用感を教えてください。良い情報が得られれば鳥取の会員も喜ぶと思いますので、支部会議で発表させていただきます。」と言ったところ、それきり連絡なし。実名で証言してくれる人がいなかったか?

 

【パーツクリーナー(呉工業)】

本田電気管理事務所使用。吹き付けるだけで硬化した古いグリスが除去できる。VCBや低圧ブレーカーの機構部の洗浄などに非常に有効。トラッキング痕のあるVCB絶縁物に使用(VCBメーカーは保障しないので自己責任で)し、絶縁性回復効果実感。揮発性ガスが含まれているので、完全に乾くまで火気厳禁(接点の火花も)。

 

【KURE556(呉工業)】

本田電気管理事務所使用。潤滑洗浄剤の定番。月次点検の際も常に携帯し鍵穴や乾電池の接点不良に大変重宝。接点復活効果もあるが、高圧機器には使用経験なし。また、瞬間潤滑性は高いが、比較的長期間の潤滑性は期待できないのでVCBの機構部などには不向き。

 

【KUREグリースメイト(呉工業)】

本田電気管理事務所使用。三菱製VCBの指定潤滑剤で、十分に古いグリスを洗浄すれば他社製のVCBやLBSの機構部にも使用可能。長期間潤滑性能を維持します。パーツクリーナーで洗浄した後にグリースメイトでVCBを整備したところOCRの連動試験(瞬時)で動作時間が0.04秒短縮し、5年以上管理値内に収まっていた。

 

【KF96SP(信越シリコーン)

本田電気管理事務所使用。本来は離型剤。鉱物油よりも絶縁性能が高く緊急的な絶縁回復の必要があるときには非常に便利。やや高価ですが費用対効果は抜群。ppホルダー(ポリプロピレン)やエポキシ樹脂、ポリマー等を侵食しないため安心。また無停電年次点検を採用する場合や塩害地域ではppホルダーやケーブル端末(キュービクル内)などのトラッキング防止のため塗布する。LBSが近いときにはウエスに吹き掛けて使用。ブレードに掛からないように十分注意。

 

 

 

信越シリコーンKF96SP
信越シリコーンKF96SP
三菱電機VFシリーズ取扱説明書
三菱_vcb.pdf
PDFファイル 2.1 MB